楽しいけど楽というわけではない

 永くピアノを教えさせてもらって、何回かお母さま方に言われたことがあります。

「練習しなさいと言うのがもうしんどい」「ピアノのことで親子喧嘩になるのが本当に嫌なんです」「泣きながらピアノを弾いていてそれを見るのが辛い」・・・等々。

 

 若かりし独身の頃の私はこんな風に言われると言葉に詰まっていたように思います。今でも明確な答えが出せるわけではないけれど、私も子育てを経て(21歳と18歳の子供がいます)こういう風に言いたくなるお母さま方の気持ちは本当によくわかるようになりました。一生懸命だからこその言葉でもあると思いますし。小さい子どもの頃は保護者の方のサポートあってのピアノレッスンですから。できれば、ピアノが親子の楽しい時間であってほしいと思いますし、そうなるように講師も一生懸命知恵を絞りつつ根気よく工夫していかなければと思います。それを踏まえた上で、お伝えしたいことが一つ。

 

 よく、"「音楽」は「音が楽しい」のであって、「音が苦」になってはいけません"とか書いてありますけど、でもね、、、決して「音が楽(ラク)」なわけではないので・・・!真剣にやるからこそ楽しいし、真剣にやっていればこそ、スランプも困難も伸び悩みも、いろんな壁が出てきます。でも必ず乗り越えられる、そうやってもがきながら成長していってるんですよって今なら少し言えるようになったかもしれません。ピアノは決してラクして弾けるようになるわけではありません。だからこそ、凄いね!と言ってもらえるのだと思います。簡単ではないから、弾けるようになった時の喜びも大きい。"今の辛さ"だけでなく、三年後・五年後、もっとその先を見据えて今を頑張るというのも、大切かなと思います。